わたしたちの周りにはものが溢れていて、何不自由なく生きていける。(ことになっている。)
今ほしいものって何ですか。物や機能は十分。ほしいのは物じゃなくて体験や承認。たっぷりの休日。大自然のなかでのキャンプ。おいしいものを家族と食べる時間。ものを極力減らしたミニマルな生活。いやいや生きていくのに必死。仕事がほしい。仕事を辞めたい。ゲームがしたい。
誰1人として同じ人はいません。まあそれは昔から、最初から。
こんな時代に誰に何を発信して、他社(者)と差別化し、ファンになってもらうのか。
そもそもそれをすることに意味があるのか、何かがよくなるのか、楽しいのか、おもしろいのか。それはデザイナーである僕自身も自覚的にならなければいけないことだと思っています。
そしてまたyou tubeやSNSによって誰もが簡単に発信でき、商売や事業を始めやすくなりました。それによって多くの自己主張や表現が、オンライン、オフラインを問わず溢れています。オンラインならば日本中、世界中が相手です。
デザインやブランディングは、「自らが何を考え、どこに向かって行きたいのか、どういう世の中にしたいかを示すための手段」です。だとするならばそれらは以前にも増して重要になっていると感じます。
でもデザインやブランディングって、大切なのはわかっているつもりだけど、どうしたらいいのか分からない。デザイナーなんて周りにいないし、デザイン事務所だって。どこにどう頼んだらいいのか分からない。そしてデザインの相談をやっているのが行政だけだったりするのもなんでなの?ってこれは僕の疑問ですが。。
これらは想像だけで言っているのではなく、日々、デザインのお仕事をしていて、いろいろな方とお話するなかで感じた僕の実感です。
「なんでもいいから相談してよ」なんてやさしい顔でいいながら入口が狭かったり、高いところにあったり、中が薄暗かったりするのがデザイン屋の現状なんだと思います。なんだかわからないけど、敷居が高い、入りにくい。デザイナーはそんなつもりないんですけどね。。つまり入り口のコミュニケーションがうまくいっていない。「デザインはコミュニケーション」なんて言っているくせに。これはデザイナーである僕自分の反省でもあります。
もちろんデザイン事務所の考え方はいろいろだと思いますが、僕は定食屋のように、パン屋のように、八百屋のように、デザイン屋にも気軽にふらっと入ってきてほしい。料理やパンや野菜と同じで、デザインも決して簡単なことではないけれど、特別なことでもありません。それらと同様、わたしたちの生活とともにあるものなのですから。
もちろんチェーン店のような温めるだけの冷凍のデザインや、どこをとっても同じ顔をした大量生産のデザインをお出ししないというのは当たり前の前提です。
この相談室はまずはデザインの入り口に気軽に入っていただくためのもの。
決してデザインを安売りしようというわけではなく、その価値を、その力を最大限に使ってもらうための最初の一歩だと考えています。
川沿いデザイン相談室
宮本 賢司